いつものように、妄想、小説。
というか、まともな文章の小説を書いたのはひさびさですか、ひさびさですね。
「バクマン。」の二次創作。
福田とお菓子を食べる話。
主人公は「あたし」で名前はありません、ペンネームはあるけれども。
要するにあなたです。
夢小説とか、ドリーム小説とかいうやつです。
キャラクター同士の触れ合いをお望みの御方には申し訳ありません。
そっとブラウザを閉じてください。
「福田先生とブルボンプチ」
「おー来たか佐々木くん。ワリーな夜遅く急に呼んじまって。お前にラストちょっと手伝ってもらおーと思ってな」
あたしのペンネームは佐々木秀明。デビューしたばっかりの新人マンガ家だ。女だけど、ジャンプらしい名前でいきたいからこのペンネームを使ってる。
アシスタントの依頼があったので、あたしは福田先生の仕事場に訪れた。『殺生由意』のアシスタント以来だ。『由意』のときに呼ばれたのと同じ時間、22時にここに着いた。アシスタントの仕事とはいえ、好きな人の仕事場に夜訪れるというのはドキドキする。彼女でもないのにこんな夜に来ちゃっていいんだろうかなんて思う。
あたしを出迎えてくれた福田先生は、紺色のジャージを着てた。学生みたい。学生と違うのはジャージの襟の部分がフードになってるとこだな。あと頭に白いニット帽を被ってるとこもだな。体に帽子ふたつって、どんだけ帽子好きだよこの人。
「安岡とか徹夜させんのワリーと思って帰したんだ。お前たぶん、昼過ぎまで寝てただろ。まーだから夜起きてても平気だと思って」
「なんで昼過ぎまで寝てたのわかったんですか」
たしかにあたしは15時まで寝てた。というか15時に玄関のチャイムが鳴って起こされた。宅配の人だった。あの人が来なかったらもっと寝てたかもしんない。
「俺は神だからわかんだよ」
「神っていうか、福田先生はどっちかって言うとピッコロですけどね」
「だれが悪の心の塊だよ。失礼なこと言うな。お前なんか戦闘力5の農夫だ」
「ちょ、だれが『ドラゴンボール』17巻でラディッツに『戦闘力たったの5か、ゴミめ』って言われたおじさんですか」
「なんつー説明ツッコミだ。だいじょーぶだ、アシをやればお前の戦闘力は2倍になる。10だ」
「10って。ヤムチャですかね」
「何言ってんだ。ヤムチャに謝れ。10はチャパ王だ」
ダメじゃないか。せめてヤムチャにはなりたい。狼牙風風拳くらいは打ちたい。や、もっともっとだ、もっと戦闘力を上げてネイルになるんだ。そしてあたしはピッコロの福田先生と合体するんだ。
「お菓子は持ってきたか」
「はい」
来るついでにしょっぱいお菓子を買ってこいと言われたので、家にあるお菓子を持参することにした。いつもお世話になってるから差し入れだ。
「それお菓子か。なんかデケーぞ」
言われながら部屋に案内される。
「コーヒーいれる。食おーぜ」
「あ、いつもいれていただいてるので、今日はあたしがいれます」
「さすがだな。そーいう気が利くヤツは出世するぞー」
それはサラリーマンの世界だ。どこの世界にマンガ家がコーヒーいれて出世するというんだ。まあいい。
あたしがキッチンに立つと、福田先生もやってきた。ミューズで一緒に手を洗う。
「やっぱりハンドソープはミューズだよな」
「あたしは固形石鹸ですけどね。あの塊が手のひらでゆっくり溶けていく感じがもう」
「わかった。お前が石鹸好きなのはわかった。もー語るな。俺はミューズを譲らねーぞ。そこらの石鹸とは気合いがちげーよ。バイ菌ぶっ殺すからな」
「ミューズなんてほとんどの成分は水ですけどね」
「ウルセーよ。世界は水でできてんだ、人も地球も70パーは水だ、水をうやまえ、砂漠に固形石鹸持ってって泡立たなくて涙目になれ」
砂漠を持ち出されては勝ち目がない。
あたしは水をうやまいながらヤカンに水を入れ、コンロにかけた。ついでに流し台に放置してあったマグカップを洗い、スプーンで1杯ずつインスタントコーヒーの粉を入れる。
「そういえば福田先生の家はヤカンなんですね。ティファールとかじゃなく」
「まーな」
「しかもオレンジのヤカン。かわいいじゃないですか」
「このヤカンは俺が上京したときに買ったヤツだからな、長い付き合いだ。そんときはコンビニで働きながらアシしてる生活で金もねーし、ティファールなんか高くて買えねーし、いちばん安いヤツがこれだったんだよな。いや、もっと安いのあったけどピー鳴らねーヤツでなー。こいつが680円で鳴らねーのが650円で、30円の差どーするかで1時間も悩んでこれ買ったなー。色もこれしかなくて。いや、あったけど、それは俺の時給よりたけーんだよ。ヤカンのために1時間以上も働けるかよ、な」
「悩んでる間に働けばよかったんじゃないですか」
「ウルセー。今言うな。そのときに言え」
30円のチカラを発揮したヤカンがピーと鳴ったので、あたしは火を止めて、カップにお湯を注いだ。
福田先生はそれを持って部屋の真ん中まで行き、クッションの上にドカッとあぐらをかいた。その姿がかっこよすぎて、あたしはまた惚れた。
「机散らかってるから床で食おーぜ。原稿も汚すと困るしな」
あたしも投げ出されたクッションを受け取り、向かいに座る。
「そのデケーお菓子早く見せろ。気になるじゃねーか」
「まあ見てくださいよ」
あたしは紙袋から箱を取り出した。箱の上には色とりどりの熊の絵が描いてある。熊の絵の上にはブルボンプチの文字。箱を開けると中には。
「ブルボンプチ、24種類セットです」
「おおおーすげー、どーした、これどーしたんだ」
「今日ちょうど懸賞で当たったんですよ。福田先生に差し入れです。24種類ドカッといっちゃってください」
宅配の人はこれを持ってきてくれたのだ。ちゃんと起きて出迎えてよかった。
「すげー。うわ、当選おめでとうの紙まで入ってるじゃねーか。24種とか、お前、高学年の色鉛筆みてーじゃねーかすげー」
「金色銀色はないですけどね」
「あんなモンは嬉しーけど使い道ねーからな」
「白も使わないですよね」
「ねーな。俺結局丸付けで赤ばっかり使ったわ」
「あーなんか隣り同士でテスト交換して丸付けしましたね。今思えば先生仕事しろよって感じですけど」
福田先生は箱からプチを1個1個取り出し、嬉しそうに見始めた。その姿がかわいすぎて、あたしはまた惚れた。
「あー、でも俺、甘いの食えねーわ。ワリー。安岡とかにやってもいーか」
「あ、はい。すみません、半分くらい甘いのですね。しょっぱいのだけ食べてください」
「酒飲みの舌だな俺は」
「お酒飲むんですね。知らなかったです。飲んだらどうなるんですか」
「どーもならねーよ。フツーだ。頭にネクタイ巻いて全裸になって寿司の折り詰め持って立ちションでもすると思ったのか」
「や、思ってないですけど」
やだよそんな福田先生。あとその酔っ払いの姿はいろいろ詰め込みすぎだ。
「雄二郎はすぐ寝んだよなー。頬染めてなー。寝てもいーけど支払いのときは起きろってな」
言いながら、福田先生はプチのうす焼を開けた。ギザギザのところを縦に裂く開け方だった。雑な開け方だ。あたしはつまみを持って開く派なんだ。
「俺はプチでこれがいちばん好きだな」
福田先生が食べ始めたので、あたしもつまんだ。
「しょっぱいのだったら、あたしもこれですね」
「だよな。袋が黄色っつーのもいー。金が貯まる」
「それ財布の話ですけどね」
「いーんだよ、なんでも。お前は全部入れたらどれだよ」
「あたしはチョコラングドシャです」
「雄二郎と一緒じゃねーかよ。そもそもなんだよ、ラングドシャって」
「猫の舌って意味ですよ」
「残酷すぎるじゃねーかよ。猫の舌食うってお前」
「や、クッキーですけど」
「そもそもチョコラングドシャは白い恋人のパクリだろーが」
「それ言ったら、うす焼きも亀田製菓のパクリじゃないですか」
「いや、そもそもプチは全部パクリじゃねーのか。まークッキーはブルボンだから許してやるにしても、しょっぱい系は亀田の流れ汲んでるぞ」
「ナビスコのチップスターのパクリもありますね」
「マガジンで言ったら『フェアリーテイル』だぞ」
「いえ、あれは尾田先生です」
そういうことにしておかないと賠償金で講談社はつぶれる。
「福田先生はなんで甘いもの苦手なんですか」
「昔は食えたんだけどなー。中2のときクラスでチュッパチャプスの早食いがはやってな。まず俺らダチの間で競争したんだ。噛むのナシっつールールでな。で、俺がいちばん早かった。それ知ったクラスのヤツらが俺に挑んできて、毎日昼休みに競争したんだよな。俺はその期間中、毎日毎日アメ食い続けて、そんで気付いたんだよ、俺は甘いモンがキライだってよ。もー俺は一生アメ食わねーぞ、ビッキーズ観に行ってアメ投げてきたら投げ返してやる」
ビッキーズなんてもういないし。
「まー、結局クラスでいちばんはえーの俺だったわ。俺の舌使いに勝てるヤツはいねー」
そう言って福田先生は、最後の1枚のうす焼をなんのためらいもなく取った。まあいい。好きな人に食べ物を与えるのが愛だもの。バレンタインだってそうだ。
「お前、うす焼のいちばん美味い部分知ってっか」
全部食べ終わった福田先生が、唐突に聞いてきた。あるのかそんなもの。
「なんですか。真ん中ですか」
「ハイ、バカ」
「じゃあ端っこ」
「ハイ、無知」
「じゃあなんなんですか」
「知らねーなら俺が食う」
言って福田先生はあたしの右手を取った。そうしてそのままゆっくり顔を近付けてきた。唇が軽く開いた。その唇があたしの右手の人差し指に当たり、あたしのそれを吸い込んだ。福田先生の舌があたしの人差し指の腹に当たる。
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。何してる何してる何してる。
福田先生があたしの指をなめてる。あったかい肉の感触とトロトロの唾液。あたしの指がそれに包まれてる。
どうしたらいいの。これどうしたらいいの。
「んっ」
どうしたらいいの。変な声出た。恥ずかしい。死にそう。
指。指なめられてる。クラスでいちばん上手な舌使いの人に、指、なめられてる。好きな人に、指、なめられてる。
福田先生は人差し指をなめ終えて、次はあたしの親指を口に含んだ。
なめられた人差し指が熱を持ってる。そして親指も。その熱がどんどんあたしの体に流れてくる。
「ハイ、正解は指に付いた塩でした」
指から口を離した福田先生がニヤリとしながら言った。
あたしはチカラが全部抜けちゃいそうだった。アメだったら溶けてる。食べるの早いはずだよ。だってそんな舌使いされたらアメのほうから溶けるよ。
福田先生はあたしから手を離した。そうして自分のをなめようとした。
だけどあたしはそれを逃さなかった。震える手であたしは福田先生の右手をつかんだ。顔は見れなかった。心臓早いままだった。ギュッと目を閉じたまま、あたしは福田先生の人差し指を口に含んだ。
「あああーっ、テメー、俺の塩っ」
言葉とは裏腹に福田先生はなんの抵抗もしなかった。あたしにされるがままだった。
あたしは福田先生の人差し指の腹に舌先を当てて、それからゆっくりと舌の腹を当てて、キュッと吸った。下から上に舌を動かした。指の腹だけじゃなく、側面も、それから爪の方にも舌を回り込ませてなめた。
しょっぱい。塩の味。うす焼の味。でも、それだけじゃない。福田先生の味がする。わからないけど、きっとする。
親指もなめた。人差し指と同じ味。福田先生の味。好きな人の味。好きな人の。
「クソ、いちばんうめーの取られた」
唇を離したあたしに福田先生が言った。
「しっ、仕返しですよっ、独り占め、しよう、と、する、からっ」
言葉が上手く出てこない。心臓早いの止まんない。顔赤いかもしんない。わからない。福田先生は何も気にしてないように見える。
「1個じゃ足りねーな。次、何食う。お前選べ」
「じっ、じゃあ、えび」
「おー、いーチョイスだ、俺もえびの気分だ」
福田先生はえびを開けた。さっきと同じ縦に裂く開け方。や、そんなのどうでもいい。だって福田先生は、あたしがなめた指でえびせんをつまんで食べたんだから。その指にあたしの唾液付いてるんだから。それ指からえびせんに付いたんだから。あたしの唾液、福田先生の口に入ったんだから。
あたしも福田先生になめられた指でえびせんをつまんで食べた。もうえびの味わかんない。福田先生の味な気がする。
「もー塩はやんねーぞ」
「あたしだってやりませんから」
きっと福田先生は自分の指をなめる。あたしのなめた指をなめる。あたしも自分の指をなめる。福田先生のなめた指。福田先生の唾液の付いた指。どんな味がするの。福田先生の味がするの。
あたしはえびせんを食べる福田先生の口を見た。彼女になれたら唇に付いた塩をなめてもいいんだよね、って思いながら。
おわり
サラッと読める軽めのものにしようと思って書きました。
思ったより長くなったりしましたが。
ひさびさにまともな小説文を書こうと思ったら、書き方を忘れてしまっていたという。
イメージを壊してしまったという御方には申し訳ありません。
全力であやまります。
ごめんなさい。
バクマン。(1)小畑健(作画)/大場つぐみ(原作)
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